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旅は、人生を拓く。

わたしが初めて海外旅行に行ったのは28歳のとき。同世代と較べてかなり遅い方だったと思います。パスポートを持ったのもそれが初めて。英語も苦手で、コーヒーショップで注文することすらままなりませんでした。

やがて仕事でどうしても語学が必要になり、必死で勉強し、海外でも働き、様々な国の友人ができました。異なる文化、価値観、人との出会いを重ねたことで、わたし自身の「多様な人たちとつながることで、思いもよらなかったことが実現できるのでは！」という想像力は、以前よりもぐっと豊かになりました。旅は、人生を拓く。今ではそう信じています。

だからこそ、イールーでは、観光スポットを巡るだけの旧来型・消費型の観光ツアーではなく、リアルな生活や営みに触れ、地域の人と直接対話をするような「旅」のコーディネートを大切にしています。それは、海外からのゲストに、地域に暮らす人が直接「ご近所さん（neighbor）」を紹介するような感覚です。

体験プログラム事業「TreckTreck」は、まさにわたし自身が暮らす、東京都江東区の深川エリアから始めました。下町情緒を味わいつつ、地域の歴史をレクチャーし、素敵な専門店やカフェ、工房を訪れ、同時に地域の人をご紹介しています。2017年6月の本格スタート以来、約1年で1,000名を超えるゲストがプログラムを体験してくれました。

TreckTreckのゲストには、欧米を中心に研究者、エンジニア、起業家、クリエイター……と様々な方々がいます。一方で、深川エリアでは、職人さん、食や文化のプロフェッショナル、クリエイター、起業家などが拠点を構え、活動しています。イールーでは、そういった海外ゲストと地域のプレイヤーのご縁をつくり、個人間の交流はもちろん、ビジネス機会にまで繋がるような出会いをサポートしています。

また、地域で活動する「TreckTreckコーディネーター」が増えることで、地域の歴史や営み、人を熟知し、新たな活動を生み出していく人が増えるといいなと考えています。今後は少しずつ、イールーのビジョンに共感する仲間を増やし、様々な人、地域、コミュニティ、テーマと手を結び、旅のコーディネート事業を展開していきます。

デジタルデバイスひとつで大量の情報が収集できてしまう時代だからこそ、リアルで身体的、人によって誘われる「旅」はますます貴重になっていくはず。

旅を通じて人生を拓き、日常をもっと豊かにする人が増えることを願っています。

株式会社イールー　代表取締役CEO／創業者　伊藤 薫
photo by HIGHLAND Yoichi Sakai